統合失調症とはどのような病気か
病名による誤解と偏見
統合失調症は、2002年6月までは「精神分裂病」という名前で呼ばれていました。精神分裂病は、スイスの精神医学者ブロイラー博士が提唱した「schizophrenia(スキゾフレニア)」を直訳した病名で、日本でも古くから使われてきました。
考え方や感情をまとめて総合的に判断したり、心の調和を保つことができなくなった状態を示しています。
しかし、「分裂」という言葉が多重人格になっているのではないかという誤解をまねくことも少なくありませんでした。
また、医療技術が進んでいない時代には、この病気は治療がきわめて難しいと考えられていました。「精神分裂病」という名前のせいで「人格が崩壊する危険な病気」という偏見も存在し、患者さんの社会復帰を妨げてきました。
「精神分裂病」から「統合失調症」へ変更
こうしたなかで、医療技術の進歩、病気の解明が進み、病気の原因は脳の働きやストレスに対する耐性などの要因が複雑に関係していることがわかってきました。また、薬物療法の進歩で、症状をうまくコントロールすることに成功し、社会復帰していく患者さんも増えていったのです。
そこで、病名による誤解や偏見を払拭するために、2002年日本精神神経学会は病名を「統合失調症」へと変更することを決定しました。
病名を変更することにより、病気に対する理解が広まり、患者さんの置かれている立場がよくなることを掲げています。
統合失調症の特徴
100人に1人の割合で起こる
統合失調症の患者さんは少ないと思われがちですが、実際はそうではありません。だいたい100人に1人の割合で起こることが分かっており、これは少ない数字ではありません。統合失調症の患者数は、脳血管疾患、ガンとほとんど変わりません。
他の病気に比べて、統合失調症が少なく思われている原因は、病気自体を周りの人に隠しているケースが多いことが考えられています。
症状の個人差が大きい
統合失調症の症状は、内容や程度、経過に個人差が大きいことがあげられます。主な症状には、幻覚、幻聴、妄想などがあります。
発症した年齢や症状の経過から大きく4つのタイプに分類されていますが、分類の仕方については現在でも議論が続いています。
統合失調症の4つのタイプ
- 破瓜(はか)型
思春期の別名である「破瓜期」に由来しています。15歳〜20歳にかけて発症する例が多く、はじめに陰性症状が現れます。
- 緊張型
発症年齢は破瓜型とほぼ同じですが、激しい興奮状態と周囲への反応の低下が交互に現れます。また、無動状態(同じ姿勢のまま長時間固まること)も特徴の一つです。
- 妄想型
症状は妄想が中心であり、30歳以降に発症することが多いタイプです。周囲からは症状が分かりにくいこともあります。
- 残遺型
破瓜型と経過が似ていますが、治療後も症状が続いていくタイプです。陽性症状が残る陽性型と、陰性症状が残る陰性型に分けられることがあります。
※どれにも当てはまらないタイプのものは、「鑑別不能型」「非定型精神病」に分類され、研究が続いています。