パーキンソニズムについて
パーキンソン病によくみられる、手足のふるえ、筋肉のこわばり、歩行障害などの症状を「パーキンソニズム」といいます。
ただし、これは病気の名前ではありません。また、これらの症状があるからといって、パーキンソン病であるとは限りません。ここを間違えると、今後の治療にも影響してくるので注意しなければなりません。
パーキンソニズムには大きく分けて「本態性振戦」と「症候性パーキンソニズム」の2つがあります。
本態性振戦
本態性とは「原因不明の」という意味で、原因のはっきりしていないふるえのことをいいます。体質や遺伝が関係していると考えられています。
パーキンソン病は約1000人に1人の割合で発症しますが、本態性振戦は約100人に1人の割合で発症します。
ふるえはパーキンソン病の初期症状であることが多いので、間違えやすくなります。ただし、両者のふるえには明らかな違いがあるため、専門医が診断すればすぐに分かります。
違いは以下の通りです。
- 本態性のふるえは、手にあらわれて足にはみられません。首を左右に振りやすいのも特徴です。
- パーキンソン病よりもふるえが速く、1秒間に10回ほどみられます。
- パーキンソン病のふるえは、静かに横になるとあらわれますが、本態性振戦は安静にすると止まります。
- 本態性振戦は、何かをしようとするとふるえが強くなります。
- パーキンソン病の発症は50〜60代ですが、本態性振戦では20代からでも始まります。
症候性パーキンソニズム(パーキンソン症候群)
症候性パーキンソニズムは、脳の病気や薬剤などが原因となって起こる病気です。以下のようなものがあります。
薬剤性パーキンソニズム
症候性パーキンソニズムでもっとも多く見られるのが、薬剤性のものです。向精神薬、抗うつ薬、降圧薬、消化薬などのドーパミン受容体を遮断する作用のある薬剤が原因となって引き起こされます。
薬を服用して3〜4ヶ月に症状があらわれ、ふるえの他に寡動や固縮がみられます。また、いてもたってもいられない状態(アカシジア)が起こることもあります。
原因となっている薬の服用を止めることで症状はおさまります。
脳血管障害性パーキンソニズム
症候性パーキンソニズムのなかでも比較的多いものです。脳梗塞や脳出血などによる脳血管障害によってパーキンソン症状が起こると考えられています。
パーキンソン病の症状との違いは、安静時のふるえがない、歩行障害・姿勢反射障害がよく見られる、話すときにろれつが回らない、などがあります。MRIやCTなどの画像検査で脳の病変を確認していきます。
正常圧水頭症
脳室にある脳脊髄液の吸収が悪くなって起こると考えられている病気です。くも膜下出血や頭部の外傷などが原因となります。ふるえは生じず、痴呆、歩行障害、失禁などがみられます。
進行性核上性麻痺
症候性パーキンソニズムの約4%がこの病気の患者さんといわれています。初期にはパーキンソン病と間違われるケースが多くあります。
症状には、首が後ろに反り返るような姿勢になる、眼の動きが悪くなって足元が見えにくくなる、などがあります。性格の変化や精神症状を伴うこともあります。
びまん性レビー小体型認知症
この病気の特有の症状として、幻覚や妄想が目立つ、アルツハイマーのような認知障害があらわれます。初期にうつ病の症状が出てうつ病と診断されることがあります。
シャイ・ドレーガー症候群
シャイドレーガー症候群とは、自律神経症状を主な症状とする脊髄小脳変性症の中の病型の一種です。
線条体黒質変性症
初期にパーキンソン病と似たような症状があらわれる病気です。50代の男性にやや多くみられることが分かっていますが、病気の原因は不明です。
オリーブ橋小脳萎縮症
中年以降に発病する変性疾患で、小脳性の運動失調がみられます。進行すると、自律神経症状やパーキンソン症状が出てきます。
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パーキンソニズムとは?症状や原因関連エントリー
- パーキンソン病とはどのような病気なのか
- パーキンソン病になると、だんだん体が動かしにくくなり、日常生活も不自由になります。その原因は、神経伝達物質(ドーパミン)の減少が関係しています。
- パーキンソン病の原因/リスク因子
- パーキンソン病の原因については、まだはっきりとは解明されていませんが、いくつかの仮説が立てられています。なかでもミトコンドリア機能障害説が有力です。
- パーキンソン病の初期症状とは
- パーキンソン病はゆっくりと進行していくので、なかなか症状に気づくことはできません。ただし、「ふるえ」の初期症状は多いので見逃さないようにしましょう。
- パーキンソン病の4大症状
- パーキンソン病には、特徴的な4つの症状があります。手足のふるえ、筋肉のこわばり、無動、姿勢反射障害です。これらの症状について詳しく解説しています。
- パーキンソン病の自律神経症状/精神症状
- パーキンソン病の症状は、運動面だけではありません。便秘、立ちくらみ、頻尿、冷えなどの自律神経症状や、うつ、幻視、不眠障害などの精神症状も現れます。
- 家族性・若年性パーキンソン病について
- パーキンソン病には、遺伝で発症する家族性のものと、20代で発症する若年性のものがあります。それぞれのパーキンソン病について解説しています。