食道がんの放射線化学療法
放射線単独の治療は行われない
食道がんの治療では、抗がん剤による化学療法は単独で行われることがありますが、放射線を単独で行うことは、現在ではほとんどなくなっています。
放射線を用いる場合は、抗がん剤と組み合わせて、「放射線化学療法」として治療に当たることが一般的となっています。治療法が確立してからの歴史は浅いですが、がんの根治を目指す治療法として進歩を遂げています。
【治療成績の比較】
●例 原発が粘膜固有層または粘膜下層から外膜に浸潤する腫瘍で、転移が認められない場合
■放射線化学療法 3年生存率・・・30% 5年生存率・・・27%
■放射線のみ 3年生存率・・・0% 5年生存率・・・0%
放射線化学療法の目的
かつては、放射線化学療法の目的は、年齢や体力的な問題で手術ができない患者さんのために行うものでした。
現在では、以下のように2つの目的のために放射線化学療法が行われています。
手術の治療効果を高めるため
手術を行うことを前提としている場合で、手術の効果を高める目的です。手術と放射線化学療法を組み合わせることによって、高い治療効果が得られると期待されています。
がんの根治を目指すため
がんの根治のために、放射線と抗がん剤で治すのが目的です。食道が残せてがんが消滅するというメリットがありますが、あとから手術が必要になる場合もあります。
実施前には入念な検査が必要
放射線化学療法をはじめる前には、いくつかの検査を受けることになります。内視鏡検査、胸部CT検査、上部消化管X線検査は必ず行います。
必要に応じて、超音波内視鏡検査、PET、血液検査、心電図検査も行っていきます。
スポンサード リンク
放射線化学療法の問題点
放射線化学療法の治療効果は高いですが、手術を超えるまでの治療成績はまだ報告されていません。治療によりがんが消えても、あとから食道に再発することもあります。
また、治療後しばらく経過してから、放射線治療の副作用があらわれることがあります。放射線を食道に当てた場合には、粘膜が炎症を起こして、飲み込みにくさや声のかすれ、渇きなどを感じることがあります。
さらに、放射線が当たった胸部の皮膚や反対側の背中に、「日焼け」のような火傷(やけど)の跡ができることがあります。全身症状では、食欲不振や倦怠感、貧血なども心配されます。
放射線化学療法を受けるには十分に確認を
放射線化学療法は、多くの医療機関で受けられるような一般的な治療法とはなっていません。しかし、手術が受けられない患者さんには、食道が残せて治療効果もあるために、選択肢に入れておきたいものになります。
治療を受ける際は、病院の医師によく確認し、説明を求めて、インフォームド・コンセントを十分に行ってから決めていきましょう。
被曝の心配はないか?
放射線治療では、人体には安全な量の放射線を使用していますが、がんの危険性は0ではありません。
治療を受けた部位は、受けていない部位に比べてがんになる確率が高くなります。ただし、がんが発症するまでには長い潜伏期間があり、子どもの場合をのぞいてはほとんど心配はありません。