慢性腎臓病の検査と腎臓専門医との連携

尿検査と血液検査が重要

慢性腎臓病の検査は、ほかの腎臓病と同じように「尿検査」と「血液検査」が中心となります。早期発見のためにはこれらの検査が欠かせません。

 

尿検査

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尿検査には4つの採尿法があります。病院でその都度尿を採る「随時尿」、起床直後の尿を採る「早朝尿」、排尿しはじめの3分の2と残りの尿を別々に採る「分杯尿」、一定期間の尿をためて調べる「蓄尿」があります。

 

そして、尿検査で重要となるのが「たんぱく尿」と「血尿」です。たんぱく尿が出ていると、腎臓のなかの糸球体に異常があると考えられます。血尿には目で見てすぐにわかるものとわからないものがありますが、いずれも結石、糸球体腎炎などの病気の可能性があります。また、糖尿病腎症の早期発見には、微量アルブミン尿の検査が行われています。

 

検査項目

  1. たんぱく尿:基準値は40〜80mg/日。1日に150mg以上になると病気の可能性あり
  2. 潜血反応:試験紙を使って反応を見る。血尿、ヘモグロビン尿、ミオグロビン尿でも陽性になる
  3. 糖尿:陰性なら正常。血糖値が160〜170mg/dl以上になると尿に糖が出る
  4. 微量アルブミン尿:少量の検出で腎障害、糖尿病腎症などを発見できる

 

血液検査

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腎臓には血液中の老廃物を濾過する働きや、造血を促すホルモンを分泌する働きがあります。血液中に含まれる老廃物や血球成分を調べれば、腎機能の状態がわかります。

 

また、血清クレアチニンの量を調べると腎機能を詳しく把握できます。クレアチニンは血液中に含まれている物質で、血清クレアチニン濃度によって糸球体濾過量がわかります。腎機能が低下してくると、尿として排出されずに血液中に蓄積するようになります。

 

検査項目(基準値)

  1. 白血球数(4000〜8000個/mm3):なんらかの感染があると上昇する
  2. 赤血球数(男性450万〜550万/mm3 女性400万〜500万/mm3):貧血が進むと減少する
  3. ヘモグロビン(12〜15g/dl):貧血が進むと減少する
  4. ヘマトクリット(男性38〜54% 女性36〜47%):貧血が進むと減少する
  5. 血小板(14万〜40万個/mm3):大量のたんぱく質が失われると減少する
  6. 血清クレアチニン(男性0.7〜1.2mg/dl 女性0.5〜1.0mg/dl):腎機能低下が進むと上昇する
  7. 血清尿素窒素(8〜20mg/dl):腎機能が低下すると上昇する
  8. 血清総たんぱく(6.5〜8.0g/dl):尿中に大量にたんぱくが出ると低下する
  9. 血清アルブミン(3.6〜5.0g/dl):尿たんぱくが多いと低下する
  10. 血清コレステロール(130〜220mg/dl):ネフローゼ症候群があると上昇する
  11. 中性脂肪(30〜150mg/dl):ネフローゼ症候群があると上昇する
  12. 血清ナトリウム(134〜143mEq/l):腎機能低下が進むと低くなる
  13. 血清カリウム(3.2〜4.5mEq/l):高血圧、尿細管の異常があると低くなり、腎不全があると高くなる
  14. 血清カルシウム(8〜9mg/dl):ネフローゼ症候群、慢性腎不全で低下する
  15. 血清リン(2.5〜4.3mg/dl):慢性腎不全で上昇、ビタミンD欠乏で低下

その他の検査

 

そのほかの検査には、超音波検査(エコー)、MRI(磁気共鳴画像検査)、CT検査、腎臓の一部を採取して調べる「腎生検」などがあります。

健診で尿の異常が見つかったら・・・

健診などで尿の異常が見つかった人は、まずかかりつけ医で再検査してもらわなければなりません。かかりつけ医は、より詳しく尿検査と血液検査を行います。そして、腎臓病の治療が必要と思われる患者さんには腎臓専門医を紹介します。

 

ただし、全国の慢性腎臓病患者の数は400万人以上といわれていますが、腎臓専門医は3000人ほどしかいません。少ない腎臓専門医から集中的な治療を受けていくためには、かかりつけ医と専門医との連携が重要となります。

 

 
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