末期腎不全と心血管疾患を予防していく
慢性腎臓病を治療しないで放っておくと、じょじょにステージが進んで、さらなる腎機能の低下をまねきます。慢性腎臓病の治療には、大きくわけて2つの目標が掲げられます。
まず1つ目は、QOL(クオリティ・オブ・ライフ:生活の質)を損なう末期腎不全を防ぐことです。ステージ4まではまだ腎機能が残っていますが、ステージ5に至ってしまうと、腎機能はほぼ失われてしまいます。回復する見込みはなくなるので、透析療法もしくは腎移植をしないと生命を維持できません。
2つ目は、心血管疾患の発症を防いだりその進行を遅らせることです。慢性腎臓病が進むと高血圧が悪化して、動脈硬化のリスクも高まります。その結果、脳や心臓の血管が傷み、心筋梗塞や脳卒中(脳梗塞、脳出血)を発症するようになります。
慢性腎臓病の集学的治療
「集学的治療」とは、多方面からアプローチして病気の進行を食い止める方法です。食事療法や生活改善に加え、薬物療法や代替療法、手術などを一人ひとりの病状に合わせて組み合わせていきます。
1.生活習慣の改善
日頃の生活習慣を見直して、動脈硬化の進行を防ぎ、慢性腎臓病も食い止めます。タバコを吸う人は禁煙も必要です。
2.食事指導
主に塩分の制限を行います。慢性腎臓病のステージに応じて、たんぱく質やカリウムの制限も行われます。
3.高血圧指導
血圧を下げる薬である降圧薬を使用して、降圧療法が行われます。
4.尿たんぱく、尿中微量アルブミンの減少
降圧薬を用いて、尿たんぱくや尿中微量アルブミンを減少させていきます。
5.貧血の治療
慢性腎臓病のステージが進行すると、腎性貧血を起こします。貧血は慢性腎臓病や心血管疾患をさらに進行させてしまうため、集中的に治療を行います。
6.糖尿病の治療
末期腎不全などの発症を防ぐためには、糖尿病の治療も必要になってきます。
7.脂質異常症の治療
慢性腎臓病の危険因子のひとつである脂質異常症の治療も行います。
8.尿毒症の治療
経口吸着薬を使用して尿毒症の治療を行います。
9.その他の慢性腎臓病の原因に対する治療
以上のほかに、慢性腎臓病の原因が明らかとなっていればその治療も行います。腎臓専門医によって診断・治療が行われます。
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慢性腎臓病の治療の2大目標関連エントリー
- 慢性腎臓病(CKD)の定義と診断基準
- これまでは、慢性に進行する腎臓の疾患は種類が多いためわかりにくいとされてきました。そこで生まれたのが、腎臓病をステージ別に治療するための「慢性腎臓病」という定義です。慢性腎臓病の患者はこれからも増えると予想されます。
- 慢性腎臓病のステージ(病期)分類
- 慢性腎臓病のステージ分類は、腎機能の評価指標である糸球体濾過量(GFR)によって定められています。
- 慢性腎臓病の症状と経過
- 慢性腎臓病は、自覚症状に乏しい病気です。進行した症状には、めまい、だるさ、貧血、むくみ、頭痛などがあります。さらに病状が進行すると、最後には末期腎不全に至ります。
- 慢性腎臓病の検査
- 慢性腎臓病の早期発見はなかなかむずかしいですが、定期的に尿検査と血液検査を受けることで見つかりやすくなります。最低でも年に1回、リスクがある人は年に2回検査を受けておくと安心です。
- 慢性腎臓病の生活と食事
- 肥満、喫煙、ストレスなどの生活習慣は、慢性腎臓病の発症に大きく関係しています。とくに食事に関しては、塩分やたんぱく質の制限が必要になります。
- 慢性腎臓病の薬
- 慢性腎臓病の治療に使う薬について解説しています。多くの場合、病気の原因となっている高血圧を改善するために降圧薬が使用されます。