日本では血液透析が生涯治療

血液透析とはどのようなものか

血液透析は、体内にたまった老廃物を、1回に4〜5時間かけて人工腎臓で除去し、血液をきれいにする方法です。

 

寝ている患者の腕の動脈側と静脈側に針を刺し、チューブを通して血液を体外に取り出して、ダイアライザーと呼ばれる透析器に送って血液を浄化します。そして、きれいになった血液を静脈に戻します。

 

ダイアライザーは、直径0.2ミリほどの半透膜でできた中空糸を約1万本束ねたもので、周囲には透析液が流れています。血液が中空糸を通り抜けるとき、血液中の老廃物や水分、塩分、電解質などは透析液に移動して不要なものは取り除かれます。

 

寝ている患者の近くには監視装置が置かれており、循環している血液の量、透析液の量・温度などをチェックできるように体制が整えられています。

 

ダイアライザーのミクロの特殊な繊維は、日本が世界に誇る透析医療の先端技術が使われています。透析医療のレベルも、長期透析者の数も日本が世界一です。一方の米国では、腎不全への対策は基本的に腎移植によって行われています。腎移植が本命で、人工透析は暫定処置としての役割が大きくなっています。

 

なお、血液透析を受けながら就学も地域によっては可能です。1998年からは健康保険法に在宅血液透析も適応されており、負担も大幅に軽くなっています。家庭透析も実施されるようになり、透析医療について知識や技術習得のトレーニングはありますが、時間に融通が効くようになっています。

 

血液透析のブラッドアクセスについて

 

血液透析を効果的に行うには、毎分約200ミリリットルの血液をダイアライザーに循環させる必要があります。これだけの血流量を確保するためには、血液の取り出し口をつくらなければなりません。
これを「ブラッドアクセス」といいます。

 

ブラッドアクセスは患者の命の綱であるため、これを良好な状態で維持することはきわめて重要となります。ブラッドアクセスを長持ちさせるためには、次のような点を考慮しておかなければなりません。

 

シャントを長持ちさせるための条件

  • 低血圧に注意する
  • 穿刺の失敗をしない
  • 感染症対策を怠らない
  • 血流の保持に注意する  など
内シャント

 

長期間の透析治療が必要になるとき、手首近くの動脈と静脈を手術でつないで血管を太くします。これを「内シャント」といいます。”シャント”とは短絡という意味です。患者によっては静脈の血管が細い場合がありますが、そのときは人工血管を使います。

 

内シャントを長期間使用していると、血管が詰まって血液が流れなくなる異常が出てくるため、耳をあてて血液が流れているかを音で確認する必要があります。

 

なお、動脈と静脈をチューブでつないで皮膚の外に設置する「外シャフト」という方法もありますが、感染症を引き起こすことが多いので、現在ではほとんど用いられていません。

 

ダブルルーメンカテーテル

 

患者の血管の状態によっては、足の付け根の大腿動脈にカテーテルを刺してブラッドアクセスにする方法があります。また、首に近い内頸静脈、鎖骨下静脈にカテーテルを刺すこともあります。

 

動脈直接穿刺

 

内シャントが詰まった患者には、前腕の動脈に針を刺してブラッドアクセスにすることもあります。他に心疾患を合併している場合に検討されます。

 

血液透析のデメリット(問題点)

 

透析治療のほとんどを占めている血液透析ですが、いくつかの問題点も存在します。血液透析を受ける人は前もって把握しておくとよいかもしれません。(必要以上におそれる心配はありません)

 

  • 毎回3〜5時間の透析をする必要がある
  • 針を刺すときに痛みがあり、跡もできやすい
  • 透析中に頭痛、吐き気、筋肉のけいれんなどが起こる場合がある
  • 食事制限・水分制限が厳しくなる
  • 長期の透析は合併症を引き起こすおそれがある

 

 
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日本では血液透析が生涯治療関連エントリー

人工透析の現状と目的
現在、腎不全で透析治療を受けている人は、全国に28万人以上います。人工透析の方法は、血液透析と腹膜透析の2つがあります。
ブラッドアクセスの合併症
血液透析によるブラッドアクセスの合併症には、全身性のものと局所性のものに分けられます。とくに、感染症の予防対策が必要となります。
身体への負担が少ないCAPD(腹膜透析)
CAPDとは腹膜透析のことです。透析液の交換の回数がかかりますが、血液透析よりも身体への負担が少ないというメリットがあります。通院も月に1回程度ですみます。
CAPDの特性と実施可能な体制
CAPD療法の優れた点と、CAPDを実施するために必要な設備や体制について紹介しています。患者自身が自ら透析を行うため、管理体制が重要となります。
CAPD治療の患者適応のめやす
CAPD治療の成果を上げるためには、患者の状態や家族の同意、心理面などのさまざまな事項を評価して決定していかなければなりません。CAPDを行ってはならない症例についても紹介。
CAPDの合併症
CAPDに関連する合併症には、腹膜炎、出口部感染、皮下トンネル感染、カテーテル機能不全などがあります。対処法を紹介しています。
透析液の組成に関連した合併症
透析液の性状や組成に関連した副作用、合併症を紹介しています。透析療法の遂行のためには、合併症の予防が課題となっています。
人工透析の合併症・感染症
透析患者は、人工透析の合併症や感染症についての知識を持つことも必要です。心不全、脳血管障害、骨の異常にはとくに注意です。
在宅透析のメリット・デメリット
患者さんが家庭で自分の手によって透析を行う「在宅透析」も普及してきています。在宅透析の長所・短所について紹介しています。
透析導入後の水分コントロールについて
腎不全で透析に入ると、自分で水分管理をしていく必要があります。病気になる以前はほとんど気にしていなくても、透析導入後は水分コントロールが不可欠です。
透析者向けの塩分コントロール法
食事の塩分コントロールについて紹介しています。透析をはじめたばかりの人向けに、比較的実践しやすい内容を載せています。
透析者がおさえておきたい8つの数値項目
透析者は病院から検査データをもらいますが、項目が多すぎて何を見たらよいのかわからないと思います。ここではとくに重要な8つの数値項目を紹介しています。長生きするための指標にしましょう。
長生きの透析者ほどよく食べ、よく運動している
透析歴が長い人は、病気にかかっていない人よりも食事の管理がきちんとできている人が多く、運動量も多い傾向があります。自分の健康と向き合うチャンスと前向きに捉えています。
終末期の人工透析 見送りや中止が広がる
腎不全になった患者さんに対して行われる人工透析ですが、高齢者に対しては体に大きな負担もかかるため、透析の実施に迷うケースもあります。終末期の人工透析も、中止や見送りが増えているという結果が出ています。