ブラッドアクセスの合併症と感染しやすい条件

ブラッドアクセスの合併症

全身的な合併症

 

全身的な合併症には次のようなものがあります。

  • 不整脈
  • 労作時の息切れ、動悸、頻脈
  • 心陰影の拡大
  • 心電図上の異常

 

これらはシャントする血液量に相当する心拍出量の増加から起こります。増加が心拍出量の10%以内に収まっているときはあまり問題ありませんが、それ以上になると、上記のような合併症があらわれるようになります。

 

とくに貧血の強い患者は、症状があらわれるのも早くなります。このような患者には、血流量をおさえる施術をしたり、カテーテル挿入法などの方法をとっていきます。

 

局所的な合併症

 

局所的な合併症には、閉塞、感染症、静脈高血圧症、スチール症候群、動脈瘤などがあります。

 

閉塞

シャントが閉塞してしまう状態です。ただ、外シャントではしばしば見られましたが、現在最もよく用いられている内シャントではあまり見られなくなりました。内シャントが閉塞した場合は手術が必要となります。

 

感染症

皮膚の穿刺孔(小さな傷)から細菌感染を引き起こすことがあります。敗血症になる場合もあります。

 

穿刺の失敗、穿刺針の汚染、局所の消毒不完全、皮膚の循環障害などは感染のリスクを高めます。

 

静脈高血圧症

前腕や上腕が腫張して、疼痛を訴えるようになります。重症化すると、皮膚の壊死や潰瘍形成がみられます。このような場合は血流を変える手術を行います。

 

スチール症候群

シャントを作ったことによって動脈の血流が静脈に流れ込み、動脈末梢の血流が減少するため、手指の疼痛や壊死を起こす症状です。血流量を減少させたり、他の位置にブラッドアクセスを作ることになります。

 

動脈瘤

内シャントの吻合部や穿刺部に発生します。動脈瘤が破裂しような場合は、切除して再吻合していきます。

 

カテーテルの合併症

 

このほかに、静脈カテーテルを用いたブラッドアクセスもありますが、以前は気胸や血胸が問題となっていました。

 

最近では、カテーテルの慢性的合併症として、鎖骨下静脈が閉塞するという合併症が多発するようになっています。

 

 
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