透析療法で起こりやすい合併症/感染症
人工透析を受けるようになって寿命が増え、何十年も生活を続けている人も増えてきました。しかし、透析療法を行っても、失った腎機能を完全に補うことはできません。
血液透析や腹膜透析が体の負担となって、さまざまな病気を合併しやすくなってしまいます。
ここでは、透析患者が知っておきたい合併症や感染症を紹介しています。正しい知識を得てその予防に努めましょう。
不均衡症候群
血液透析による代表的な合併症が不均衡症候群です。透析を始めたことで血液中の老廃物が急激に除去され、脳の細胞液の濃度バランスが崩れることが原因と考えられています。
主な症状には、頭痛、吐き気、不安感、けいれん、血圧降下などがあります。
不均衡症候群を予防するには、血液透析の導入期は短時間で済ませて、その後、緩やかに時間を増やしていきます。また、食事療法で血液中の窒素化合物が多くならないようにしたり、塩分・水分の制限を行うことが有効です。
なお、ゆっくりと透析が進行する腹膜透析では、不均衡症候群はみられません。
低血圧(透析困難症)
透析困難症とは、人工透析が長期間つづくと、血圧が降下して低血圧になり、透析が行いにくくなる合併症をいいます。
心不全
慢性腎不全の患者の死亡原因の多くが心不全です。腎機能が低下すると心臓にも多くの負担がかかり、息切れや呼吸困難などの症状があらわれるようになります。
心臓に栄養を送る血管の流れも悪くなり、狭心症や心筋梗塞を合併することもあります。
予防には、血圧のコントロールや体液のバランスの管理などが重要となります。
脳血管障害
高血圧の患者は、脳出血、くも膜下出血、脳血栓などの脳血管障害を起こしやすくなります。
血圧のコントロールや食事療法による管理が大切です。
骨や関節の異常
腎不全によりビタミンDの産生が低下するため、カルシウムの骨への吸着が減少し、骨の異常が起こりやすくなります。二次性副甲状腺機能亢進症や高リン血症などが原因となります。
予防や治療には、カルシウムの濃度調整、活性型ビタミンD製剤の使用、食事療法によるリンの制限があります。
神経障害
手足を動かす末梢神経に異常が起こり、手足がだるくなります。知覚の異常も起こります。
発育障害、性腺の異常
腎臓病を患っている幼児は、腎機能の低下により成長ホルモンの分泌が損なわれるため、発育に障害が発生します。
成人の場合、インポテンツ、月経異常、性欲の低下などの症状があらわれます。
感染症
感染症は、血液透析による重大な合併症のひとつです。
透析の際に針を皮膚に刺しますが、この傷から細菌感染をすることがあります。
感染症を予防するには、皮膚を清潔に保ったり、免疫力を高めることが必要です。
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