元気で長生きするための8項目
腎不全の患者は、腎臓が機能しなくなるので、さまざまな機能障害に悩まされます。そこで人工透析で老廃物を除去するとともに、元気で生きていられるように体の管理に努めなければなりません。
透析者は毎月、病院から体の状態を表す検査データをもらいます。病院からも簡単な説明がありますが、専門家ではないとなかなか情報を読み取ることができません。
ここでは透析者がとくにおさえておきたい8つの数値項目、1.尿素窒素、2.クレアチニン、3.尿酸、4.ヘマトクリット、5.アルブミン、6.リン、7.カリウム、8.β2-ミクログロブリンについて解説しています。いずれも元気で長生きするために重要な項目です。
尿素窒素はたんぱく質の一種で、体内にたまってくると、血管壁や血球膜、消化管の粘膜などの細胞に障害をもたらします。脳にたまると、意識の変化を生じさせることもあります。いわゆる尿毒素で、本来は腎臓で排泄されるものですが、腎不全の患者は外に出すことができませんから、体内に蓄積して悪さをします。
たんぱく質は私たちの生存に必須な物質なので、ただ食事の制限するのではなく、まずは十分なたんぱく質を摂ることが大切です。そのうえで、十分な透析をして尿素窒素の解決をしていきましょう。
クレアチニンは筋肉が活動すると出てくる老廃物で、尿素窒素のように食べ物の影響を直接受けることはありません。腎機能が低下してくると、クレアチニンは体内に蓄積されて、血清クレアチニン値が高くなります。
ただし、クレアチニン値自体は、体格差や男女差、年齢によって数値が異なってくるので、透析前のクレアチニン値を気にするより、透析後にどれだけ値が落ちているかに注目するのがいいでしょう。
クレアチニン値が落ちていればそれだけ透析が行われていることを示し、変化が少ない場合は透析時間が少ないと考えることができます。
尿酸は食べ物に含まれるプリン体という物質が分解してできる老廃物で、ビールをはじめ、肉類、レバー、牛乳などに多く含まれています。腎不全になると、腎臓から尿として排出されなくなるので、尿酸値が高くなります。
尿酸がたまって慢性化すると、血管をつまらせて動脈硬化の原因になったり、血液のなかで針状の結晶になり関節に蓄積すると、痛いことで知られている痛風になります。
赤血球が血液中に占める容積、割合をヘマトクリット値といいます。赤血球は酸素を体中に運ぶという重要な役割をしているので、この値が低いということは、酸素や栄養を運ぶ能力が低いことを意味します。低すぎると貧血症状が起きます。ヘマトクリット値を上げるためには、良質なたんぱく質や鉄分をたくさん摂ることがたいせつです。
アルブミンは肝臓でつくられるたんぱく質の一種で、赤血球を体の隅々まで運ぶ役目をしています。また、血管の圧力を一定に保つ働きもあります。アルブミンの値が低いと、おなかに水が溜まったり、むくんだりして栄養不足が心配されます。また、肝硬変などの肝臓障害も起こしやすくなります。
リンは主にたんぱく質が分解してできる物質です、体内で起こるさまざまな生体反応のサイクルを助ける大切な働きを担っています。リンが低すぎるとこのサイクルがうまくまわらなくなりますが、逆に多すぎて蓄積されるようになってもよくありません。
腎不全でリンが尿から排出されなくなって蓄積されると、カルシウムとくっついて、二次性副甲状腺機能亢進症という病気を引き起こします。透析患者はリンを吸着させるために、炭酸カルシウムを摂ったり、治療剤のオキサロールを使用したりします。副甲状腺ホルモンの値が高くなったりすると、副甲状腺の摘出手術により、ホルモンの分泌を抑制する方法がとられます。
カリウムも体には必要不可欠なものですが、多くても高カリウム血症を起こし、低すぎても低カリウム血症を起こして心臓に負担がかかります。カリウムは野菜や果物、海藻類、芋などの健康によい食べ物に多く含まれていますが、腎不全で排出ができなくなると、カリウムが体内に蓄積されて、手足のしびれや体のだるさといった症状が現れます。
透析不足になると高カリウム血症になりやすいので、透析効率のチェックが欠かせません。一方で、下痢などで低カリウム血症を起こす場合は、カリウムを多めにとって適切な数値を保つことが求められます。
β2-ミクログロブリンは、透析アミロイドーシスという病気の原因物質です。アミロイドという異常な繊維状のたんぱく質が、骨や関節に沈着して、痛みとともに機能障害を起こします。ダイアライザーによる長期透析で、β2-ミクログロブリンが蓄積されるという問題がありました。
現在ではダイアライザーも進化しており、β2-ミクログロブリンの70%ほどを除去できるようになっています。透析者のβ2-ミクログロブリンの基準値は30〜70mg/lと言われています。
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