透析導入後の水分コントロールについて

自己管理は水分コントロールから

透析に入った人が、それまでの生活といちばん大きく変わるのは、「水分管理をしなくてはならない」ということでしょう。以前は多少の食べ過ぎや飲み過ぎでも身体は大丈夫だったかもしれませんが、腎臓の機能が低下して透析を受けるようになると、腎臓の働きがどんなに偉大だったのかが確認できます。

 

なぜ水分を抜く必要があるのか、水が多いとなぜいけないのか、という疑問についてですが、まず水が体内に多くたまると、血管の中にも水分が充満するようになります。すると、水分が血圧を押し上げて高血圧となります。

 

このような高血圧は、降圧剤などの薬では下げられず、心臓や肺などにも水がたまると、心不全などの合併症を引き起こしてしまいます。高血圧は動脈硬化の原因にもなるおそろしさもあります。このような理由から水分を抜く必要があります。

 

また、塩分を摂ると必ず水がたまります。これは脳や体の機能に、体内の塩分濃度を一定に保とうとする働きがあるため、塩分を摂るとその濃度を維持しようとして体が水分を欲します。塩分は1回の透析ではなかなか除去できません。

 

除水が多い場合、血管からどんどん水が引かれるので、その分、血管の中の血液量を保とうとして心臓からどんどん血液を送り出さなければなりません。これは心臓にかなり大きな負担がかかっています。水分は多くためずに、時間をかけてゆっくり抜くのがベストです。

 

水分管理は家族の協力がたいせつ

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一人暮らしの場合、気をつけるのは自分一人ですが、家族とともに暮らしている人は、食事も家族といっしょになるので、本人のみならず家族の人も水分管理に注意してあげる必要があります。

 

たとえば朝食がパン食の場合、ベーコンやソーセージ、スープなどの塩分を気にしなければなりません。ごはん食の人は、干物やかまぼこ、煮物の汁、味噌汁、納豆のタレや醤油などの塩分には注意です。

 

朝食でこれですから、品数が増える夕食ではもっと大変です。盛り合わせ料理などは家族も薄味にしてもらって、自分のお皿で調味料を加えるなどの配慮をしてあげましょう。

 

家族みんなが透析者の塩分制限を支えていく環境をつくっていくことです。透析者が元気で長生きするためには、家族の理解と協力があってこそなのです。

 

 
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