初心者向けの塩分コントロール法
食事が人生の最大の楽しみという人も多いのではないでしょうか。どんなに仕事がつらくても、家に帰ってお風呂に入ったあと、おいしいご飯を食べるのが至福というのもいいですね。
しかし、ある日から透析が必要になって、「塩分コントロールをしなければ命が危ない」と医者に言われたらどうしましょう。長年慣れ親しんできた自分の味覚を急に変えるのは難しいものです。
とくにお酒のつまみになる食べ物には、塩分を多く含んでいる塩辛いものも多くあります。それをいきなり制限しろと言われたら、身体なんかほっといて食べたいものを食べることを優先してしまうかもしれません。
ただ、塩分を極力抑えてもおいしい食事を楽しむことはできます。塩分コントロールを身につけることで、それまでは気づかなかった新たな味覚を発見できることもあります。日常で少し注意するだけでも、かなりの塩分を抑えることができるので、ぜひ試してみましょう。
1.すべて天然ダシでおいしく食べる
市販のカツオだしには塩分が多く含まれていますが、昆布やカツオぶしなどの天然ダシを使うようにすれば、かなりの塩分を抑えることができます。基本的にダシの味で頂くようにし、醤油などの味付けはわずかな量にします。
健康を考えた透析食といっても、ただ薄味にしただけではおいしくなく、食も進みません。ダシをしっかりとることで、コクも旨味も楽しめるようになります。
2.素材の味を楽しむ
塩や醤油などの調味料を使うと味が濃くなりおいしくなりますが、調味料なしで素材の味を楽しんでみるのもおすすめです。たとえば、豆腐に醤油をかけないで豆腐本来の味を楽しんだり、野菜を炒めるときもオリーブオイルを使うだけでおいしく食べられます。
どうしても調味料を使うときは、バルサミコ酢を用意して、小皿にわずかだけ垂らすのがいいでしょう。刺し身は直接魚に醤油をかけないで、これも小皿に少し垂らすだけです。
加工食品をとる場合、そのまま食べないで塩抜きしてから食べると塩分コントロールできます。アジやサバの干物は、塩分が抜けやすいように飾り包丁を入れて、水道水で流して塩抜きます。ウインナーやソーセージは、減塩のものを買った上で、切れ目を入れてボイルして塩を出し、フライパンで焼き目を入れるといいでしょう。
3.外食では調理物をなるべく食べない
仕事などの関係上、どうしても外食に頼らざるをえない場合もでてきます。外食は塩分表示されているところもありますが、多くの場合、自分で調理しているわけではありませんので、どのくらい塩分があるのかがわかりません。
そこで、ステーキは塩を振らないで焼いてもらい、ソースかかけないで持ってきてもらいます。やきとりはタレや塩をつけないで素焼きにしてもらいます。タレは小皿に別にもらって、自分で加減しながら食べるようにします。調理物ではなく、素材に近いものを食べれば、あとは自分で味付けを加減して頂くことができます。
他に干物などの塩分が多いものが出てきたときは、どんぶりにお湯をもらったりして、身をゆすいで食べるといいでしょう。
4.塩分ゼロをしっかり伝えて注文する
お店に入ったら必ず「塩分ゼロ」を伝えて注文します。このとき「塩分制限をしているので」と必ず理由を告げるようにします。パスタなどはもともと少量の塩分が入っていますが、どの程度までOKするかは自分の経験則で決めます。
なお、「塩を入れないでください」とだけ伝えると、代わりに多めに醤油で味付けしてくる誤解を生むことになるので、しっかりと塩分制限していることを伝えましょう。
5.融通が効くお店をつくる
こちらの事情を理解して快く注文を引き受けてくれるお店は、多いようで実は限られています。毎回注文の度に細かい説明をするのは疲れてしまいます。
味やサービスが気に入ったお店は、当然行く機会も増えてくるでしょう。するとお店のマスターとも親しくなって、こちらが何も言わなくても、事情を理解して塩分を抑えた食事を持ってきてくれるようになります。
このように融通が効く行きつけのお店を知っておくと、とても精神的に楽になります。透析者にとって、安心して外食できる環境があるのは非常に頼もしい存在になります。
ツイート
スポンサードリンク
透析者向けの塩分コントロール法関連エントリー
- 人工透析の現状と目的
- 現在、腎不全で透析治療を受けている人は、全国に28万人以上います。人工透析の方法は、血液透析と腹膜透析の2つがあります。
- 日本では血液透析が生涯治療
- 血液透析の方法について、その原理を解説しています。透析治療のなかでも、血液透析を受けている人は圧倒的に多くなっています。
- ブラッドアクセスの合併症
- 血液透析によるブラッドアクセスの合併症には、全身性のものと局所性のものに分けられます。とくに、感染症の予防対策が必要となります。
- 身体への負担が少ないCAPD(腹膜透析)
- CAPDとは腹膜透析のことです。透析液の交換の回数がかかりますが、血液透析よりも身体への負担が少ないというメリットがあります。通院も月に1回程度ですみます。
- CAPDの特性と実施可能な体制
- CAPD療法の優れた点と、CAPDを実施するために必要な設備や体制について紹介しています。患者自身が自ら透析を行うため、管理体制が重要となります。
- CAPD治療の患者適応のめやす
- CAPD治療の成果を上げるためには、患者の状態や家族の同意、心理面などのさまざまな事項を評価して決定していかなければなりません。CAPDを行ってはならない症例についても紹介。
- CAPDの合併症
- CAPDに関連する合併症には、腹膜炎、出口部感染、皮下トンネル感染、カテーテル機能不全などがあります。対処法を紹介しています。
- 透析液の組成に関連した合併症
- 透析液の性状や組成に関連した副作用、合併症を紹介しています。透析療法の遂行のためには、合併症の予防が課題となっています。
- 人工透析の合併症・感染症
- 透析患者は、人工透析の合併症や感染症についての知識を持つことも必要です。心不全、脳血管障害、骨の異常にはとくに注意です。
- 在宅透析のメリット・デメリット
- 患者さんが家庭で自分の手によって透析を行う「在宅透析」も普及してきています。在宅透析の長所・短所について紹介しています。
- 透析導入後の水分コントロールについて
- 腎不全で透析に入ると、自分で水分管理をしていく必要があります。病気になる以前はほとんど気にしていなくても、透析導入後は水分コントロールが不可欠です。
- 透析者がおさえておきたい8つの数値項目
- 透析者は病院から検査データをもらいますが、項目が多すぎて何を見たらよいのかわからないと思います。ここではとくに重要な8つの数値項目を紹介しています。長生きするための指標にしましょう。
- 長生きの透析者ほどよく食べ、よく運動している
- 透析歴が長い人は、病気にかかっていない人よりも食事の管理がきちんとできている人が多く、運動量も多い傾向があります。自分の健康と向き合うチャンスと前向きに捉えています。
- 終末期の人工透析 見送りや中止が広がる
- 腎不全になった患者さんに対して行われる人工透析ですが、高齢者に対しては体に大きな負担もかかるため、透析の実施に迷うケースもあります。終末期の人工透析も、中止や見送りが増えているという結果が出ています。