アルポート症候群、基底膜症候群、多発性嚢胞腎などについて

さまざまな遺伝性腎疾患

腎臓病にはさまざまな種類の病気がありますが、なかには遺伝子と深い関係のある病気も存在します。原因や症状、治療法などはまだ解明されていない部分もありますが、これからの研究課題となっています。

 

アルポート症候群

 

代表的な遺伝性の腎臓疾患にアルポート症候群があります。遺伝性腎炎とも呼ばれています。男性に現れやすい腎疾患で、病気の進行も男児のほうが女児よりも早いことがわかっています。

 

原因はまだはっきりとわかっていませんが、常染色体のW型コラーゲンの異常であると考えられています。

 

症状については、幼児期から小学校低学年の間に血尿が出はじめて、年齢とともにたんぱく尿がみられるようになります。やがて症状が悪化して腎機能が低下し、20〜30歳までに腎不全に陥ります。難聴の合併率が高いのも特徴です。白内障を伴うこともあります。

 

アルポート症候群に対する根本的な治療はありませんが、透析療法や腎移植手術が行われています。

 

糸球体基底膜菲薄化症候群

 

糸球体基底膜菲薄化症候群とは、糸球体の基底膜が薄いために、赤血球が糸球体を透過して尿にもれてしまう病気です。

 

原因については、糸球体基底膜合成に関わる何らかの遺伝子異常と考えられています。

 

症状には、小児期からの血尿があります。たんぱく尿を伴うことはほとんどありません。腎機能が低下するケースもほとんどないため、病院で経過観察のために診察を受ける程度になります。

 

多発性嚢胞腎

 

多発性嚢胞腎とは、両側の腎臓に多発性の嚢胞(液体がたまる袋)がたくさんできて腎臓が次第に大きくなり、腎機能が低下していく病気です。夫婦のどちらかがこの病気の遺伝子をもっていると、その子供には性別に関係なく50%の確率で遺伝することがわかっています。

 

症状は血尿が一般的で、目で見てわかる程度から顕微鏡で見ないと分からない程度まであります。たんぱく尿があらわれる人もいます。
嚢胞の数が増えてくると腎臓が大きくなり、お腹が張るようになったり、食事が一度に多く食べられなくなるようになります。40歳以降になると腎不全に陥ります。

 

治療に関しては、手術によって治すことはできません。経過を観察しながら、進行を抑えるために血圧の管理などを行います。

 

 
スポンサードリンク

遺伝性腎疾患関連エントリー

急性腎炎
小児に起こりやすい腎炎が急性腎炎です。急性腎炎の原因と症状、治療法などを解説しています。
慢性腎炎
慢性腎炎は腎臓病のなかでも起こりやすい病気です。最近の研究では、いくつかの種類があり、病状が進行しないものがあることが分かっています。
急性腎不全
腎不全の一つである急性腎不全について、原因、症状、治療法などを紹介しています。急性腎不全は、腎臓病のなかでも危険な病気で、死亡率も約50%と高くなっています。
慢性腎不全
慢性腎不全について、原因、症状、治療法などを紹介しています。末期腎不全を経て尿毒症になるため、危険な病気です。
ネフローゼ症候群
ネフローゼ症候群の原因、症状、診断基準などを解説しています。たんぱく尿やむくみなどを主な症状としている病気です。
IgA腎症(アイジーエーじんしょう)
慢性腎炎のなかでもっとも多いIgA腎症の症状や治療法を紹介しています。日本をはじめとするアジア諸国に多いという特徴があります。
糖尿病腎症
糖尿病の増加とともに増えているのが糖尿病腎症です。糖尿病腎症の症状から検査方法、治療法までを紹介しています。
痛風腎
痛風の合併症である痛風腎(つうふうじん)について、症状や治療法を解説しています。激しい痛みを伴うのが特徴です。
腎硬化症
腎硬化症の症状や原因、治療法などを解説しています。良性腎硬化症と悪性腎硬化症に分けられており、症状も異なってきます。
水腎症
水腎症の症状や原因、治療法などを解説しています。子供の水腎症は、先天的な原因のものが多いです。
尿細管間質性腎炎
尿細管間質性腎炎の原因から症状、治療法までを紹介しています。急性のものと慢性のものがあり、症状も違ってきます。
遊走腎(腎下垂)
立ち上がったときに腎臓が下がりすぎる病気が遊走腎です。遊走腎の症状の現れ方や治療法などを解説しています。
腎腫瘍 (腎細胞癌)
腎腫瘍の症状や原因、治療法について解説しています。腎臓に発生する腫瘍の多くは腎細胞がんで、悪性腫瘍となっています。
腎尿路感染症
腎尿路感染症の原因から症状、治療法などを紹介しています。尿路は細菌に感染しやすい器官となっています。