IgA腎症の症状や治療法を解説

免疫複合体の腎臓への沈着によるもの

IgA腎症とは何か

 

IgAは、抗体である免疫グロブリンの一種で、気管支や胃腸などの粘膜を外界から侵入してきた病原菌から守る働きをしています。粘膜に病原菌が感染すると、IgAは病原体にくっついて排除していきます。

 

IgAが病原菌をとらえた状態のものを「免疫複合体」といいますが、これが血液にのって腎臓へ送られて沈着することがIgA腎症の原因と考えられています。

 

腎臓の糸球体の中心部にある組織はメサンギウムといいますが、この領域にIgAが沈着し、炎症を起こします。この慢性腎炎をとくにIgA腎症というのです。

 

IgA腎症は、1968年にフランスの病理学者ベルジェによって発見されたため、別名を「ベルジェ病」といいます。発見された当初は、この病気の予後はよいとされ、あまり深刻には受け止められませんでした。しかし、研究が進むにつれて、たいへん重大な病気であることがわかったのです。

 

日本はIgA腎症の患者が非常に多い

 

IgA腎症は、世界でも頻度の高い疾患として知られていますが、日本をはじめとするアジア諸国に非常に多いという特徴があります。

 

日本では患者数も多く、慢性糸球体腎炎の約40%がIgA腎症によるものであることがわかっています。発病年齢は子供から大人まで幅広いですが、10代後半から30代前半が多いことが知られています。また、女性よりも男性に多い病気です。

 

初期段階では症状がないため、健康診断や検査でたんぱく尿や血尿が発見されて判明することが少なくありません。血液検査を受けると、約半数の患者さんで血液中のIgA値が高くなっています。ただし、IgA値が高くなくてもIgA腎症にかかっている可能性もあります。確定診断を出すためには、腎生検が必要になります。

 

IgA腎症の進行

 

IgA腎症が進行すると、腎機能が低下して以下のような症状があらわれます。

  • むくみ
  • 高血圧
  • 食欲低下
  • 疲労感
  • 息切れ
  • 夜間の頻尿 など

 

1993年に日本とフランスで発表されたIgA腎症の調査によると、患者の約40%が発症後20年で末期腎不全になるという報告がなされています。そのほか、たんぱく尿が増え続けてネフローゼになったり、高血圧も治らなくなるとされています。

 

IgA腎症の治療法

 

患者の病態によってさまざまな治療が試みられています。

 

生活指導

激しい運動は避けて、過労にならないこと、感染症(カゼ)を予防することが重要です。食事療法では、減塩とたんぱく質の制限を心がけていきます。また、女性の方は妊娠・出産も避けることが望ましくなっています。

 

薬物療法

降圧薬による血圧のコントロールや、抗血小板薬の投与で炎症による糸球体での血液の凝固を防ぎます。副作用も比較的少ないです。
最近では、副腎皮質ステロイド薬を用いて長期予後を改善させる治療も増えています。ステロイドには強い抗炎症作用の効果があるためです。ただし、その分副作用も大きいので、医師に慎重に診断してもらわなければなりません。

 

 
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